沖縄戦教科書検定問題について、小金井市でのこの一年

(『けーし風(シマだより 関東)』2008.9 掲載)

昨 年九月の県民大会後、朝日新聞東京武蔵野版には、“国立市から教科書検定撤回の意見書が出た”という大きな記事が載った。三多摩各地でも同様の動きがある とのこと。「えっ? 小金井では?」と慌てて市議会議員に確認したところ、なんの動きもないと知る。「それならば!」と、小金井市内の保護者・市民・先生 たちの集まりである『教育ってなんだろう?』こがねい連絡会に呼びかけて、急きょ要望書を提出したところ、議員提案により全会一致で可決され、意見書が送 付された。(沖縄要望書)

ホッとするのも束の間、それをきっかけに、怒濤のように沖縄戦の日々が始まったのだった。

ま ずは、東京での意見書提出に動いた各地域(国立市、練馬区、中野区、三鷹市、小平市等々)との連携。『沖縄戦教科書検定意見の撤回を求める市民の会―東京 ―』と名付けられ、その後、一二月の文科省への要請行動、ビラまき、各地での集会支援と目まぐるしく動きまわることになった。

星陵会館や国立での報告会でも、小金井のように全会一致での意見書採択は珍しいと、報告を求められた。

三月には、関東学院大学の林博文教授ゼミの沖縄戦スタディツアーにまで参加してしまった。その詳細は、日本の戦争責任資料センター発行の『Let’s 58号』に《林ゼミ・沖縄戦 超ハードスタディツアー よろよろ参加記》として掲載されている。

そ れにしても小金井ではお知らせしてないね、という話になり、『教育ってなんだろう?』こがねい連絡会では、三月終わりに《沖縄の今ってなんだろう?》と題 して、沖縄のお菓子とコーヒーを楽しみながら、小金井在住の阿麻和利健さんとアーケーズのライブ、映画『教えられなかった戦争・沖縄戦―阿波根昌鴻・伊江 島のたたかい』上映、浅羽晴二さん(子どもと教科書全国ネット二一)の講演という、沖縄づくしの一日イベントを企画した。

検定問題をめぐって様々な人と出会い、私としては大きな収穫を得た一年だったが、周囲のフツーのお母さんたちに広がる大きな動きにはならず、相変わらず遠い地でのできごと、と思われているようだ。

また、教科書検定自体の問題にも大きく踏み込みたいところだが、なかなか難しい。新学習指導要領と来年の教科書採択をにらみ、勉強会を重ねていくしかない。

そ れでも沖縄に関心を持とうという動きが継続しているのが、せめてもの希望である。小金井では四月以降、平和関係のイベントや公民館のお祭り、町の盆踊りな どで、沖縄についての講演、三線や唄、エイサーや舞踊、沖縄料理の出店といった、市内在住の沖縄人や沖縄文化に興味を持つグループの活躍が目をひくように なった。

教科書検定問題から少しずつ繋がった人びとである。声高に沖縄戦について問うことはないが、文化活動を通じて自然に意識を高めることができるようだ。

私の子どもが通う小学校のこの秋の学芸会では「沖縄戦を題材にした劇を取り上げたい」と六年生の先生が語っていた。今の教育現場では難しい試みかもしれないが、実現を心待ちにしている。

(『教育ってなんだろう?』こがねい連絡会 片山薫)