安心して産みたい!

(原島圭子 中町)

「すぐに出産場所を決めて、今日にでも予約してください。早くしないと定員になっちゃうから」――、昨年8月、市内の婦人科で妊娠検査を受け、懐妊 報告に続けて言われたこと。三回めの妊娠ですが、このように切迫した言われようは初めてで、「産む場所が減っている」という現実が急に自分の身にせまって きました。厚労省発表のデータを見ると、分娩を取りあつかう施設(病院、診療所、助産所)は2008年8月末で全国3350。これが9月末には3276 と、短いあいだに90もの施設が分娩を取りやめているのだから驚きました。
10月には、脳内出血を起こした妊婦さんが、搬送病院が見つからずに亡くなるという事故が。その後も、やはり脳内出血の妊婦さん(調布市)が、杏林大学病 院など複数の病院に受け入れを拒否され、出産はしたものの意識不明となっているという事故が明るみに。近い場所で起きた事故でもあり、人ごととは思えませ んでした。経過がよかろうが、安産だろうがなかろうが、お産はいのちがけ。脆弱な産科状況を目の当たりにしての妊婦生活は、それだけでストレスです。安心 してお産をゆだねられる場所がほしい、そんな当たり前の願いがかなえばいいな、と思います。

ますます産む場所が少なくなる!?

分娩施設の減少に拍車をかけるかもといわれているのが、2009年1月から始まる「産科医療補償制度」です。分娩が原因で起こった脳性まひ児の医療や養育を補償するもので、妊婦が掛け金を出産施設に払って、その施設が制度に加入するしくみです。
事務手続きなどの負担増に加え、補償審査や事故再発防止用の分娩経過データをとるため、こどもの心音などをはかるモニター装着などが妊婦に求められるそう で、これを機にお産はやめようか……という現場の声もあるとか。家庭的なお産がしたくて助産院を選んだけれど、私もモニターをつけなきゃけないのか な……。
また、制度は法律ではなく、あくまで任意加入のものとあって、加入を迷う施設もあるそう。すると、選んだ施設によって補償に差が出ちゃうこともある? 産む側にとっても、問題アリアリです。

お金だけが問題じゃない

この補償の掛け金は、私たちの分娩費に上乗せされます。事務経費などの違いがあるので、すべての施設で一律とはいかないものの、3万円から5万円の増額になるそうです。私がお世話になる助産院では、掛け金+事務手続き費として4万円が上乗せされていました。
そのため、健康保険から支払われている出産一時金35万円が、2009年1月には38万円に増額されます。ちなみに、出産一時金は自治体によってはさらに補助があって、小金井市の場合は現在40万円ですが、やはり増額になるそうです。
……いや待てよ。いまだって分娩費は出産一時金だけではまかなえていないわけで、増額したからって同じこと。そもそも産む場所が少ないんだから、お財布事情にあわせて出産施設を選ぶなんてことだってできない。うーん、どうにかならない???

*産科医療補償制度/先天性などの脳性まひ患者が補償対象から除かれていること、また、体重や妊娠週数の制限などもあり、救済される児とされない児がいることも問題。それに、補償機関は民間とあって、運営も気になるところです。