生活保護制度の改善と貧困ビジネスの規制を求める意見書

生活保護制度の改善と貧困ビジネスの規制を求める意見書

11月30日、名古屋高等裁判所にて、2013年〜2015年に国の行なった生活保護基準の引き下げによる保護費の減額決定は違法である、という判断が示された。

物価高騰の影響もあり生活に困窮する人たちが増える中、生活保護基準の引き上げが必要である。

また、失業者や高齢者、障害者等の生活困窮者をターゲットに、住まいの確保や就労支援などを謳い文句に勧誘して、生活保護を利用させ、都心から離れた郊外の物件に入居させて利益を得て、生活保護費を搾取するなど、新たな貧困ビジネスの被害が増えている。

居所を失い生活保護申請した場合に、無料低額宿泊所か更生施設に入所させる事を、東京都がルール化した事で、結果的に中間搾取をおこなう悪質な貧困ビジネスが入り込む余地を与えている。無料低額宿泊所等に対する規制の実施と改善が必要である。

1、生活保護法を生活保障法へ

物価高騰に即した速やかな生活保護基準の引き上げ、土地家屋や車、預貯金など資産要件の緩和をはじめ、扶助費、住宅扶助、医療扶助等を速やかに利用でき自立しやすい制度への改善を行い、日弁連が提言しているように「生活保障法」と名称変更をすること。

2、新たな貧困ビジネスの実態調査と規制を

生活保護利用者でアパートを満室にして物件を転売、ウェブサイトの情報と異なる様々な費用の請求、相場よりも高い家賃の請求などの新たな貧困ビジネスが急増している。実態調査と早急な規制を行うこと。

3、福祉事務所に居宅保護の原則の徹底と無料低額宿泊所の実態調査を

居所のない状態で生活保護を申請すると、首都圏では無料低額宿泊所の入所が保護の要件とする違法対応が常態化しており、ベニヤだけで区切った部屋や保護費搾取などの環境に耐えられず施設から逃げ出す人が後を絶たない。また「住民票のある自治体で申請して下さい」などの追い返しが続いている。福祉事務所に居宅保護の原則の徹底の指導と住居喪失の生活保護利用者の実態調査、無料低額宿泊所の立ち入り調査の実施や長期入所させない制度化、完全個室化と保護費搾取の規制などの対策すること。

4、扶養照会の廃止を

厚生労働省の通知により、拒む人は実質的に扶養照会をしなくてもよいとされたが、扶養照会を申請の要件とする誤った対応など、困窮者支援団体には全国から相談が寄せられ、未だに改善の兆しが見えない。援助の実績がなく、親族に知られたくないと申請を妨げる要因となる扶養照会の廃止をすること。

5、福祉事務所のケースワーカーの実態調査と対策を

ケースワーカー1人あたり国基準で定める80世帯をはるかに超え、100世帯を超える自治体も散見され、適切なケースワークもできない環境となっている。実態を調査し、1人あたり80世帯以下を徹底する指導や人員配置できるような国の予算措置、福祉行政の向上に向けて各種研修や資格取得などの支援強化をすること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

内閣総理大臣  厚生労働大臣  内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)