原発新増設費用を国民から徴収する制度を導入しないことを求める意見書

原発新増設費用を国民から徴収する制度を導入しないことを求める意見書

2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故の後、日本政府は原発依存度低減を掲げ、原発の新増設に関しては否定してきた。しかし、新たな第7次エネルギー基本計画の策定において、国民的議論が全くないまま、政府はこの方針を180度転換しようとしている。政府は発電事業者や投資家の要請に応じて、巨額の建設コストを含む原発のコストを、稼働して発電する前から電気料金に上乗せして消費者・国民負担とする新たな制度の導入を検討している。「規制資産ベース(Regulated Asset Base, RAB)モデル」などを参考にすると報じられている。このような制度を導入すると、家庭や企業が払う電気代が増え、日本企業の国際競争力は喪失し、日本経済の停滞はさらに深刻化する。原発に伴う事故リスクや核拡散リスクが増大し、今でも行き場のない放射性廃棄物はさらに増える。

この制度は原発の新規建設への新たな補助金制度であり、世界の潮流である電力システムの自由化や市場化の流れに逆行する。日本では今でも巨額の政府補助金がさまざまな形で原発に対して供与されている。新規建設の費用を電気代に上乗せする制度が導入されれば、大手電力会社、関係企業、銀行などの投資家は、原発の建設によって、たとえ工事遅延やコストオーバーランが起きても、極めて大きな利益を長期に渡って安定的に得るが、国民は、長期間にわたって高い電気料金や税金を支払わなければならない。

現状において他の電源に比較して発電コストが最も高く、さらに高騰するリスクがある原発建設には、既存の原発補助金や制度ではとても足りない、ということで新たに考案されたのがRABモデルである。

最近の国際エネルギー機関の報告によると、発電コスト(円/kWh)に関して、原発の新設は再エネ新設よりも数倍高く、既存原発の運転期間延長でさえ、再エネ新設あるいは再エネ新設と蓄電池を組み合わせたものと同程度となっている。

原発新設および原発稼働延長の温室効果ガス排出削減コストは再エネ新設や省エネに比較して数倍大きい。「原発は温暖化対策に必要不可欠」という議論は経済効率性という意味で論理的に間違っている。

世界の多くの国におけるエネルギー温暖化政策は、グリーンニューディールと呼ばれる「再エネ・省エネへの積極的な投資で脱炭素だけでなく経済成長、雇用創出、エネルギー安全保障も実現する」というもので、グリーンニューディールを進めていくことは日本経済にとって死活問題である

 

よって小金井市議会は国と政府に対し原発新規建設のための新たな資金徴収制度を導入しないことを強く求めるものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

小金井市議会議長 宮 下   誠

 内閣総理大臣 様

 経済産業大臣 様

 環境大臣 様

 原子力規制委員会委員長 様