介護保険の訪問介護事業所の厳しい運営状況への支援に関する意見書

介護保険の訪問介護事業所の厳しい運営状況への支援に関する意見書

本年4月から訪問介護報酬の引き下げが実施された後、市議会では小金井市内の介護事業者と懇談し状況を確認した。

現在、国や東京都は、ヘルパー給与である人件費に対して処遇改善加算や居住支援手当といった補助を出しているが、給与が上がることで労働保険料や社会保険料も大きくなっている。

その一方で、訪問介護報酬は減額され、市内の各事業所の利益は抑えられた状態であり、高齢者が増えているにもかかわらず売上げは8割の事業所で減額となっており、どの事業所も運営実感が厳しい状況である。

厚生労働省は訪問介護事業の運営効率が良いという理由で報酬を減額したとのことだが、この背景には統計調査のあった2021年から2022年頃に新型コロナウイルス感染拡大の際の対策補助金が大きく運営に貢献した結果であり、基本報酬が大きかったためではない。また、元々訪問介護事業は処遇改善加算の比率が22.4%と他のサービスより大きく、以前より報酬を主軸にした制度設計を願う声があった。

小金井市介護事業者連絡会が、市内の事業所の現況調査をしたところ、全国的な大手とされる事業所や介護保険による特別養護老人ホームなど大規模施設併設をする事業所でも販売管理費(人件費・家賃・通信費など。総収入から減ずると純利益が算出できる)が96%までになる月もあり、そのうち70%から90%が人件費となっている。

企業としての利益はごくわずかであり、単独運営する小規模事業所においては赤字の月が頻繁にある。複数の事業を行う事で訪問介護を維持している法人であっても、これ以上厳しくなれば不採算部門として訪問介護事業の閉鎖をしかねない状況である。また、市町村が実施者となっている利益率の悪い総合事業(要介護度が要支援1・2向けサービス)を引き受けていない事業所が既にあるが、今後更に増える懸念がある。小規模事業所の閉鎖、撤退も現実的な問題として迫っている。

近年の訪問診療への報酬確立や訪問看護ステーションの普及によって、20年前は夢であった多くの市民の「亡くなるときは住み慣れた我が家で」という願いは現在、在宅のターミナルケアとしてかなりの割合で実現している。ただ、それを実行できるのは訪問医療の間を埋めているヘルパーの訪問があるからである。

このままの状態が続けば市民は人生最期の願いを手放すことになる。また、採算性の低い総合事業では、早くから利用している高齢者の要介護度の悪化のスピードを抑えているという報告もあるが、安きに流れて健康寿命をみすみす縮めるような環境になっている。

よって小金井市議会は、政府に対し、地域の介護事業者の声を反映した以下の事項を求めるものである。

1、介護事業所の家賃補助などの管理費への支援を行うこと。

2、総合事業への経済的評価の向上を行うこと。

3、訪問介護報酬の早期見直しを行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

小金井市議会議長 宮 下 誠

令和6年月 日

内閣総理大臣 様

財務大臣様

厚生労働大臣 様