なくそう!子どもの貧困『子どもの貧困解決元年2010』シンポジウムに参加して

全国フェミニスト議員連盟の機関誌『AFER』に寄稿した文章を。

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4/25、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークの設立記念シンポジウムがおこなわれた。

1月に開かれた設立準備シンポジウムにも、大勢の人が詰めかけ会場が満杯になるほど注目を集めていた。前回より宣伝が少なかったにも関わらず370人ほどの参加があり、子どもに関する各分野からの発表もあり、有意義な会となった。

 

第一部では、日弁連会長の宇都宮健児さんからの「子どもの貧困を解決することが、あらゆる貧困解決のカギになる」というメッセージに続き、同日開催された普天間基地撤去を求める県民大会とも連動して、沖縄からの報告。

元児童相談所所長の山内優子さんと沖縄タイムス記者の嘉数よしのさんは、「これまでの圧倒的な基地負担によって沖縄の子どもが蝕まれている」と語り、『沖縄子ども白書』を出版した経緯を説明。

 

第二部では、子どもに関わる各分野から報告と政策提言。

医療ソーシャルワーカーからは、小児医療機関に内在する行き場のない子どもの実態把握と福祉予算を上乗せするといった提案。

保育者からは、公的保育制度の堅持・拡充と、子育て費用の保障、親の働くルールの確立など。

小学校教員からは、給食費も含む教育費の無償化、保護者負担の教材の見直しと教師の多忙化を解消する、学童保育の充実など。

社会的養護を受けた当事者からは、養護ケアの基準を策定し徹底する、権利擁護を充実する、措置解除後のサポートの充実などが提案された。

名古屋大学の中嶋哲彦さんからは、イギリスの「子ども貧困法」をモデルにしながら、日本で制定するとすれば現行制度の問題点や改善方策を洗い出して政府の責任を明確にし、当事者参加で進めていくことが重要だという提言がなされた。

 

第三部では、高校生以上の子どもたちからの意見や報告があった。

フリースクールの生徒からは、「学びの機会を保障してほしい」という訴えとともに、『不登校の子どもの権利宣言』のこと、無償化の対象にしてほしいことと通学定期券の適用について。

朝鮮学校の生徒からは、高校無償化から排除された更なる差別への悔しさとともに、運動において日本人と連帯できた嬉しさが語られた。

自立援助ホームからは、高校無償化だけでは不十分であり、安心して生き、学びに専念できる環境をすべての子どもに保障してほしい、という願い。

定時制高校の生徒からは、7月に公開される『月あかりの下で』という映画を見て、定時制の必要性と実態を知ってほしいという話と、教科書代、修学旅行費などの私的負担の軽減の要請。

あしなが育英会と不登校新聞社の若者が司会を勤め、当事者の話をうまく引き出してくれた。

彼らからは、子どもの貧困対策基本法制定と、高校・大学の給付型奨学金の公的新設を盛り込んだ「子ども・若者『学びの平等宣言』」が提案され、採択された。

集会全体でもネットワークの設立宣言として、「子どもの貧困は、子どもの権利条約に明記されているすべての権利の否定である」という国連の指摘を含め、子どもの貧困率だけでは見えてこない、ひとりひとりの実相を明らかにし、子どもの声に耳を傾け、子どもに関わるおとなが連携して取り組みを進めようという決意が採択された。

 

発起人のひとりである立教大学の湯澤直美さんは、社会的無関心が貧困を広げていったと指摘したが、交流会の席でも、今回発表された事例について知らないことばかりだった、当事者の声が新鮮で救われた、といった声があった。

 

これまでおとなが、子どもの当事者性・主体性から目を背け続けていたことが、今、厳しく問われているのだ。